次世代アストロケミストリー:素過程理解に基づく学理の再構築

天体観測技術の進歩により、誕生直後の恒星の周囲に惑星系がつくられようとする領域(惑星系形成領域)における化学組成の驚くべき描像が捉えられつつあります。そこには複雑な有機分子が存在するだけでなく、異なる化学組成をもった惑星系が誕生する可能性があることが指摘されています。一方、太陽系探査技術も大きく進歩し、太陽系の物質的起源を記録する始原小天体の物質を地球に持ち帰る時代を迎えています。惑星系形成領域の豊かな化学は、古典的な化学反応の描像が成り立つ地上での化学や、極低温・極低密度で限定的な化学反応のみが起こる従来の星間化学のいずれでもありません。そこでの化学反応はエネルギーバリアの高さと形状に敏感で、気相や固相表面での化学反応の素過程からの理解を必要とします。物理や化学の分野では、精密な反応制御や原子分子レベルでの表面反応ダイナミクス研究などが可能となっています。それを踏まえ、私たちは天文学・地球惑星科学・物理・化学の協働によって、素過程に基づく新しい学理として次世代アストロケミストリーを創生します。この次世代アストロケミストリーによって、宇宙における化学進化史を理解し、その多様性の中に太陽系を位置づけることが可能になると考えています。

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領域代表:坂井 南美

理化学研究所 開拓研究本部

坂井星・惑星形成研究室 主任研究員

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