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A04 先端ビーム制御による気相化学反応素過程の理解
従来の気相の星間化学ではイオン–分子反応を基に、その反応速度定数は温度に敏感でないものとして構築され、極低温下(10 K)にある星間分子雲の化学組成の理解に成果を収めてきました。しかし、近年の研究で多くのイオン–分子反応は反応の活性化バリア(エネルギーバリア)の存在などのため大きな温度依存性を示し、特に、10-300 K 程度の中間温度では、バリアの形状が反応性や反応経路分岐に顕著な影響を与えることがわかってきました。そのため、中間温度で特徴付けられる惑星系形成領域での複雑な化学組成分布の意味を化学過程に基づいて理解するには、もはや従来の単純な星間化学のアプローチは通用しなくなっています。気相実験班では、反応のバリアに最も敏感な「中間温度・中間密度」における気相化学反応とその温度依存性を実験的に検証することを通して、劇的な変化を遂げる惑星系形成時の化学進化に迫ります。そのために、独自の実験装置を開発し、従来の星間化学にはない手法で、気相における分子生 成の鍵を握る「イオン–分子反応」にアプローチします。特に、惑星系形成領域の化学変化を理解する上で大きな障壁となっている以下の 3 つに焦点を当て、研究を進めていきます(1. 化学的に活性な中性原子および極性分子を含む反応の温度依存性、2. 構造異性体を含む反応分岐比、3. 反応における同位体効果)。得られた結果から、理論班、観測班との協働で、惑星系形成領域の化学組成とその多様性の理解をめざします。

A04計画班代表:中野 祐司
立教大学 理学部 物理学科 准教授
中野 祐司
Yuji Nakano
立教大学
理学部
総括・イオン–中性原子反応
椎名 陽子
Yoko Shiina
立教大学
理学部
光脱離による中性原子ビーム生成